第5回日中韓FTAセミナーの開催 (2018年9月19日、中国・北京) 2018.09.19

 

2018年9月19日、中国・北京にて、日中韓三国協力事務局(TCS)は、第5回日中韓FTAセミナーを開催しました。セミナーでは、日中韓三国の政府関係者、ビジネス部門の代表者、三国の専門学者とアジア太平洋国からの専門学者が集まり、日中韓FTA及び地域の経済協力の将来の方向性を議論しました。楊正偉(よう・せいい)中華人民共和国商務部国際経済貿易次長、金正镒(キム・ジョンイル) 産業通商資源部FTA政策長官、林和孝在中国日本大使館経済部参事官が出席し、基調演説を行いました。セミナーには、政府関係者、民間企業、学界及び報道機関を含む100人以上が参加しました。

 

<開会の辞を述べる韓事務次長>


韓梅(かん・ばい)TCS事務次長は、開会の辞で、三国経済及び貿易協力において成し遂げた実りの多い成果を認め、日中韓FTAが世界で3つの主要な経済においてメガマーケットを作るであろうと強調し、今年5月に開催された第7回日中韓サミットが、日中韓FTA及びRCEPの交渉を速めるための基盤を確立し、すべての関連国が重要な貿易交渉を進める原動力になることを望む旨を述べました。

 

<祝辞を述べる楊正偉(よう・せいい)中華人民共和国商務部国際経済貿易次長>

 

<祝辞を述べる金正镒(キム・ジョンイル)産業通商資源部FTA政策長官>

<祝辞を述べる林和孝在中国日本大使館経済部参事官>


祝辞で楊正偉(よう・せいい)中華人民共和国商務部国際経済貿易次長は、日中韓FTAが、質の高い経済統合を認識するための重要な役割を果たし、日中韓FTAが三国が一方主義や保護貿易主義に対抗する助けになるであろうという考えを示し、金正镒(キム・ジョンイル)産業通商資源部FTA政策長官は、日中韓FTAが自由な世界貿易を主張することに大いに貢献することを強調し、三国は協力を深めるために、積極的に共通の利益を探求することを奨励しました。林和孝在中国日本大使館経済部参事官は、日中韓はアジアの主要な経済国であることに言及し、日本は日中韓FTA及びRCEPの前進のために、引き続き中国と韓国と協力する努力を惜しまないと述べました。

 

<基調演説を述べる趙晋平(ちょう・しんぺい)研究員>


趙晋平(ちょう・しんぺい)国務院発展研究センター対外経済研究部前部長、研究員は、「新しい世界状況下での日中韓FTA交渉の加速」テーマとした基調演説を行いました。演説では、FTAが多国間協力達成の観点で、共有理解になったと指摘し、また、質の高いFTAは市場の開放性を進めて、経済成長を刺激する旨述べました。さらに、日中韓はFTA交渉を実用的、理性的かつ柔軟なアプローチを通して加速すべきだと提案し、三国はFTAを通じて関連した地域での協力を深めるために、長期的な地域の安定と経済発展を建設することに注視するべきだと述べました。

 

<セッション1>


セッション1は、山本泰司TCS事務次長の司会により、日中韓の専門学者が、日中韓FTAプロセスに関する分析および提案を共有しました。宋泓(そう・おう)中国社会科学院世界経済政治研究所博士は、三国は各段階において実際的になり、日中韓FTAを達成するべきだと強調し、田村明彦政策研究大学院教授は、FTAは多国間主義に対する高い需要の結果物であるとし、日中韓FTAの実現は、三国間の経済協力を促進するだけでなく、地域の安定も促進すると述べました。また田村教授は、三国は安定的に協力課題に対して手に手をとり、日中韓FTAを着実に促進しなければならないと提案しました。鄭衡坤(チョン・ヒョンゴン)対外経済政策研究所先任研究委員は、日中韓FTAの実現が、二国間の自由貿易協定と比較してより多くの利益をもたらすウィン・ウィン・ウィンの結果になると提言し、日中韓FTA交渉加速の必要性を述べました。

議論の間、趙萍(ちょう・ぺい)中国国際貿易促進委員会研究院、国際貿易研究部主任、関根栄一野村資本市場研究所北京事務所首席代表、金東洙(キム・ドンス)韓国産業研究院北京支院首席代表は、産業・金融部門の視点からの見解を共有しました。

 

<セッション2>


第2セッションでは、地域パートナーの専門家たちが意見を共有しました。セッションは、屠新泉(と・しんせん)対外経済貿易大学中国WTO研究員院長、教授の司会により行われました。チア・シオ・ユエシンガポール国際問題研究所上席研究員は、ASEANにおける経済コミュニティーについて紹介し、経済以外の要因が経済・貿易協力の原動力になりうる旨の見解を述べました。タン・シュー・ヤン、ケバングサン大学マレーシア問題・国際問題研究所助教授は、RCEPのプロセスの背景について紹介しました。タン教授は、自由貿易協定は、チェンマイ・イニチアチブを例に挙げ、自由貿易協定のプロセスは、既存の財政的協力を基盤として進めることができる点に言及しました。レミー・ダビソン、ジャン・モネ・チェア(政治経済)、モナッシュ大学ヨーロッパ・EUセンター副センター長は、地域主義に焦点をあて、世界的な例をつかい説明をし、FTAは一部の同意から始めて、後に包括的なものにすることができる旨提案をしました。

セミナーでは、日中韓とアジア太平洋地域からの専門家が議論をし、アジア太平洋地域からの専門家は、日中韓FTA実現のための意見を提供しました。セミナーは今後の地域協力に向けた継続的な議論の可能性を残し、終了しました。日中韓FTA セミナーは、三カ国間の経済協力の促進のため、TCSが主催する主要なイベントのひとつです。日中韓FTAに関するアドバイスの提供や、日中韓FTAの認識向上のためのこのセミナーは、現在まで5回開催されました。

 

<集合写真>