その他 【三国の研究機関】 中国-中国人民大学日中韓協力研究センター(法律) 2018.03.24
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中国外交部の承認のもと、中国の外交学院は2013年にはじめて日中韓協力研究センターを設立しました。以来、外交学院を中心に中国人民大学、山東大学、大連外国語大学を含む国内の大学に日中韓協力研究センターが設立されてきました。各センターは、三国間の研究機関の交流を促進し、三国協力メカニズムに対し学術的支援を提供することを目的とし、それぞれの大学が有する研究の特色と優位性を生かし、三国間の交流や相互研究などに積極的に参加し、多くの成果をあげています。本文では、中国人民大学の日中韓協力研究センター(法律)の発展と成果を紹介します。

 

 

 

1.貴研究機関の特色は何ですか? 

中国人民大学日中韓協力研究センター(法律)は、中国人民大学(以下、「人大」)において設立され、人大法学院及び人大のアジア研究の学術的サポートを得て、日中韓の法律について協力研究と国際交流を展開しています。人大法学院は、中国が初めて創設した正規の高等法学教育機関です。法曹人材の育成や学術研究、国際交流等の面で大きな成果を上げており、国内の法学教育をリードして国内外の法学交流を図る中心となっています。人大はアジアの学術研究と交流分野に豊富な学術的基礎をもっており、国内法に精通し東アジア国家の法律を熟知した優秀な人材を多く擁しています。大学が専門のアジア研究センターを設立し、副学長がセンターの主任を務めています。人大法学院は、学校の学科プラットフォームを基礎に、積極的にアジア太平洋地域に展開、特に日中韓エリアの法律関連協力についての総合的研究を展開し、学術成果を東アジアの法曹人材の育成面へと積極的に運用しています。2011年から、センターはCAMPUS Asiaプログラムの東アジア共同体法曹人材育成に関するプロジェクトの実施を担当していますが、このプロジェクトは日中韓三国の政府が認可、サポートするもので、東アジア、日中韓各国の法律に精通し、東アジア共同体建設のために「法律的、政治的な理念の共通認識を持つ、東アジア共同体の法整備と発展を推進できる人材」を育成することを目的としています。現在、すでに日中韓三国の一流の法学院(大学院法学研究科)から200名以上の学生が交流学習を行い、東アジアを理解する優秀な法曹人材を多く養成しています。

関係部門の強力なサポートのもと、人大の日中韓の法律研究と教育は東アジア地域の法律問題を研究する重要な基地として、アジアの法律に精通したハイレベルの人材を育成する協力プラットフォームとなっています。こうした基礎の上に、中国外交部アジア局の認可を受けて、人大は2015年に正式に日中韓協力研究センター(法律)を設立するとともに、日中韓協力事務局の指導のもと、日中韓を含む東アジアの法律研究、教育及び国際交流と協力に携わり、東アジア地域内の法治の発展と地域の一体化を促す役割を果たしています。

 

2.貴研究機関における日中韓に関する研究にはどのようなものがありますか?これまでの成果について教えてください。 

中国人民大学日中韓協力研究センター(法律)は人大アジア研究センターと法学院の学術的サポートを得て、日中韓を含む東アジアの法律研究に携わり、東アジア共同体の建設を促進する優秀な法曹人材を育成しています。CAMPUS Asiaプログラムの東アジア共同体法曹人材育成に関するプロジェクトのほか、センターでは主に次のような研究業務と国際協力を行っています。

 

(1)アジア法学院院長フォーラムと日中韓法学教育改革研究の推進

2001年から、人大法学院はアジアにおける法学院院長間の対話の枠組みを提案し「アジア法学院院長フォーラム」を立ち上げ、アジアの法学教育の改革と発展についての議論してきています。フォーラムは現在までに、中国、韓国、シンガポールで連続5回開催されており、アジアの法学教育の交流と協力を促してきました。センターでは、アジア法学院院長フォーラムと連携して、日中韓の法学教育改革についてテーマ別の研究を行い、一連の学術研究成果を発表しています。また2015年9月には「日中韓協力研究センター(法律)」設立式典と「東アジア法学教育と法曹改革」国際シンポジウムを開催し、成功を収めました。センターでは近日中に、日中韓法学教育改革に関する学術専門書を出版する予定です。

(2)「東アジア法律・政策フォーラム」の開催

近年、センターでは日本の協力パートナーである一橋大学、名古屋大学、関西学院大学の法学研究科及び韓国のソウル大学校、釜山大学校の法学院等と日中韓三国共同の学術問題についての広い範囲での協力研究を行い、「東アジア法律・政策フォーラム」を開催しています。現在までにそうした枠組みの下でセンターが行った主な学術研究活動には、「東アジア法制一体化問題研究」、「東アジア食品安全問題研究」、「インターネットクラウドファンディング法律規制問題比較研究」、「東アジアの司法への国民参加比較研究」等があります。

センターは今後、この枠組みの下で日本、韓国の協力パートナーと連合し、「東アジアのインターネット規制の法律問題」、「東アジアのオリンピックと地域協力」、「『一帯一路』と東アジアの法律協力」等の課題についての研究を進めていく予定です。

(3)東アジアの法律問題についての基礎的な協力研究の展開

2011年から、センターでは日本、韓国の協力パートナーと連携し、東アジアの法律に関する基礎研究業務を展開しています。2012年からは、日本の名古屋大学、韓国の法制処の国家法令センター、台湾の中正大学等の機関と共同で「東アジア4法域標準法令辞書(STD)プロジェクト」を推進し、主として東アジアの日中韓三国と台湾の漢字を使用した法律用語や法令を英訳することで、東アジア地域の関連法律をテーマとする比較法研究をいっそう推進し、東アジア地域の国際影響力を向上を図っています。プロジェクトの最終的な成果をもとに公開データベースを開発し、世界各国の法律家が利用しやすくする考えです。

一方、CAMPUS Asiaプログラムの推進と連携して、センターは日本の名古屋大学、韓国の成均館大学校といった協力パートナーとともに、インターネットを通じて「東アジア比較法」の提携教育を行っています。講義は英語で行われ、三国の専門家が講義の資料を提供しています。これを基礎に、CAMPUS Asiaプログラムの協力パートナーや日中韓各国の法学院(大学院法学研究科)で使用できる東アジア比較法の英文教材を開発する予定です。

 

3.三国協力は今後どうあるべきで、どのような研究が必要とお考えになりますか?貴研究機関における今後の研究計画を教えてください。また、そこで日中韓三国協力事務局(TCS)に求められる役割とは何でしょうか? 

日中韓は隣国として、アジア、ひいては世界の経済、政治の枠組みの中で重要な役割を果たしています。目下、三国はともに経済の持続可能な発展という大きなチャンスとチャレンジに直面しており、また複雑な北東アジア情勢という難題にも直面しています。日中韓三国の協力を強化し、三国、ひいては世界経済の成長を推進することは、国際的なガバナンス能力の向上にも重要な影響を与えます。また、これは三国の国民にも多くのメリットをもたらすことでしょう。

日中韓三国が、経済・貿易の往来や多層的・全方位的な協力を展開するに当たって、法律、法学の研究や協力が鍵となります。まず、日中韓三国の法律制度やその実践には違いがあります。各国の法律を正確に適用し、この違いに起因する摩擦を取り除くためには三国の法律関連の協力を強化する必要があります。地域の法律についての交流や協力をより強化し、東アジアの法律サービス市場の一体化、東アジアのインターネットの法規制問題をさらに推進し、イノベーション型の中小企業に対する法的保護、新たな安全の枠組みの下での国際経済の紛争解決メカニズムといった三国共通の関心事である法律上の焦点についての研究と討論を行わなければなりません。次に、三国の協力が深まるにつれ、世界を知り、アジアを理解し、コミュニケーションや交流能力のある法曹人材を育成することが非常に重要です。CAMPUS Asiaプログラムの東アジア共同体法曹人材育成に関するプロジェクトは地域に共通する法曹人材養成の中心的モデルです。第三に、「一帯一路」が提唱する推進と実践は、東アジア地域のいっそうの発展と協力にとっての新たな契機となり、新たな原動力をもたらすものです。「一帯一路」の枠組みの下での日中韓の法律制度の比較研究と国際協力の強化が新たな研究の焦点となるでしょう。

TCSは、日中韓三国が設立した政府間国際機関として、三国を結びつけ、協力の橋渡し役をしています。中国人民大学日中韓協力研究センターはすでにTCSと協力交流の覚書を交わしています。センターは、TCSの指導の下で三国の法律問題の研究と協力のいっそうの推進のため、CAMPUS Asiaプログラムの「東アジア共同体法曹人材プロジェクト」のために支援と指導をしていきたいと考えています。


 

 

丁相順(てい・そうじゅん)

中国人民大学日中韓協力研究センター主任、中国人民大学法学院教授、博士課程指導教官。米国インディアナ大学LL.M.(法学修士)、Ph.D. candidate(博士論文提出志願者)。ハーバード・ロー・スクールフルブライト客員研究者。中国比較法学研究会副会長、北京市比較法学研究会副会長を兼任。早稲田大学、立命館大学の客員研究者として滞在、また明治大学、名古屋大学、スイスのジュネーヴ大学に客員教授として招かれる。主な研究分野は、比較法総論、「一帯一路」建設と比較法、国際人権と障害者についての法律比較研究、信託法比較研究、東アジア司法制度比較研究、法学教育と司法試験制度比較研究など。主要著作は、『東アジア司法制度改革比較研究』(中国法制出版社、2014年版)、『継承と転換:日本法治の近代化研究』(中国方正出版社、2011年版)など。


 

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